子宮頸がん

■子宮頸がん

<症状>

  • 子宮の頸部にできるもので、子宮がん全体の65%を占めるほど発生率の高いがんです。
  • 早期は、無症状のこともありますが、不正出血、性行時の出血、おりものがみられます。
  • 進行すると、出血が持続的になり、おりものも膿性になり悪臭をともなうようになります。
  • さらにがんが進行し骨盤にまで達すると腰痛が起こったり、膀胱や直腸に広がって排尿困難が生じるようになります。

<原因>

  • ほとんどの子宮頸がんで、ヒトパピローマウイルスが検出されます。
  • ヒトパピローマウイルスは、性行によって感染するので、性交渉開始年齢が早い人、不特定多数との性交渉のある人、性交渉の相手が多い男性との性交渉がある人、妊娠・出産の回数が多い人に多く見られます。
  • 子宮頸がんには、扁平上皮がんと腺がんがあり、圧倒的に多いのが扁平上皮がんです。

<検査>

  • まず、細胞診を行います。綿棒などで子宮頸部の細胞をこすって採取し顕微鏡で調べる検査です。
  • 子宮頚がんの細胞診の検査結果は、5段階(クラスI-クラスV) に分けられます。
    • 「クラスI、II」:正常
    • 「クラスIIIa」:軽度ないし中等度の異形成(前がん状態)
    • 「クラスIIIb」:高度異形成
    • 「クラスIV」:上皮内がん
    • 「クラスV」:浸潤がんをそれぞれ想定してします。
  • 細胞診で子宮頸がんが疑われる場合には、膣拡大鏡(コルポスコープ)で観察し、頸部の一部を採取して組織を調べます。この段階で、どの程度進行しているかなどがわかります。

<子宮頸がんの病期(ステージ)>

  • 「0期」:0期の子宮頸がんは非常に早期のがんです。がんは子宮頸部の上皮内のみにとどまっています
  • 「Ia1期」:子宮頚部にがんがとどまっていて、深さは3mm以内で、拡がりが7mmを超えていない状態
  • 「Ia2期」:子宮頚部にがんがとどまっていて、深さは3mmを超えるが5mm以下で、拡がりが7mmを超えていない状態
  • 「Ib期」:子宮頚部にがんが留まっているが、Ia1,Ia2期では無い場合
  • 「II期」:がんが子宮頸部を越えて拡がるが、骨盤壁または、膣壁の下方部分1/3には達していない状態
  • 「III期」:がんが骨盤壁まで達していて、がんと骨盤壁との間に隙間がない、または膣壁への浸潤が下方部分1/3を越える状態
  • 「IV期」:がんが膀胱や直腸の粘膜に拡がっている、あるいは小骨盤腔を越えて肺のような遠隔臓器にがんの転移がある状態

<治療>

  • 子宮頸がんと診断がついた場合は、子宮を摘出する手術が一般的です。
  • 「円錐切除術」
    • 出産を希望する人、妊娠中で早期がんの人には、子宮頚部だけを円錐状に切除して子宮を保存する方法(円錐切除術)が用いられます。
    • 切除した組織を顕微鏡を使って検査し、それ以上がんが拡がっていなければこの時点で治療は終わります。しかし、Ia2期以上だった子宮頸がんの場合には広汎子宮全摘出術が必要になります
  • 「単純子宮全摘出術」
    • Ia1期までのごく初期の子宮頸がんの場合には、子宮だけを摘出する単純子宮全摘出術が行われます。
    • 開腹して行う方法(腹式)と、膣から摘出を行う方法(膣式)があります。
    • 通常は腹式となりますが、上皮内がんの場合には膣式で行われることもあります。
  • 「大子宮全摘出術」
    • Ia1期の子宮頸がんが適応になる手術で、子宮とともに周囲の組織や膣の一部などを切除します
  • 「広汎子宮全摘出術」
    • Ia2、Ib、II期の子宮頚がんに適応される手術です。
    • 子宮とともに膣や卵巣、卵管など周囲の組織も広い範囲で切除します。
    • がんがリンパ節にも転移している可能性が高いので骨盤内のリンパ節の切除も同時に行います
  • 「骨盤内臓全摘出術」
    • がんが子宮頸部ばかりでなく女性性器外に拡がっていると、子宮、膣とともに下部結腸、直腸、膀胱も切除する必要が出てくるため、骨盤内臓全摘出術が行われます。
    • 術後は人工肛門や尿路を再建する回腸導管、膣を再建する造膣術などの形成手術が必要となります
  • 「放射線療法」
    • 高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺す治療方法です。
    • III~IV期で手術不適応の場合、または再発した場合などに行われることが一般的になっています
  • 「化学療法(抗がん剤)」
    • 遠隔転移などのために外科療法で切除しきれない場合や、手術後にがんが再発した場合には化学療法(抗がん剤)による治療を行います。

<子宮頸がんの予後>

  • ステージ分類による5年生存率は、I期 82.9%、II期 63.6%、III期 40.1%、IV期 13.1%です。