脊髄小脳変性症

■脊髄小脳変性症

<症状>

  • 脊髄小脳変性症とは、厚生労働省が認定した特定疾患の一つで、運動失調を主症状とする神経変性疾患の総称です。主として、小脳、脳幹、脊髄に病変をきたします。
  • 一番多い症状は、運動障害で歩行時にふらつきがみられます。症状が進んでくると、立っているだけでも身体がゆれて不安定になります。また、字がうまく書けないなど手がうまく使えなかったり、話をするときに舌がもつれるなどの症状も起こります。
  • 上記の症状は、少しずつ進行していくのが特徴です。症状の進行とともに、食事の際にむせることが多くなります。
  • 運動障害以外にも、立ちくらみ(起立性低血圧のために起こります)や発汗障害、排尿障害などの自律神経症状や、末梢神経障害による筋肉の委縮などの症状がみられるものもあります。
  • 男女比は1.5:1で男性にやや多くみられます。
  • 脊髄小脳変性症は、いくつかの病型に分かれています。
    • 日本人に最も多いのは、中年以降(主として40歳代)に発症するオリーブ橋小脳萎縮症です。遺伝性はなく、初期症状として歩行時のふらつきや手の動きの障害がみられ、しだいにパーキンソニズム(ふるえや筋肉のこわばりなど)、立ちくらみや発汗障害、排尿障害などの自律神経症状が出現してきます。頭部のCTやMRIで、小脳や橋の萎縮を認めます。
    • 上記のほか遺伝性のある病型には、ジョセフ病といって若年~中年で発病し、運動障害やジストニアなどの症状がみられるものや、ホルムズ型といって若年~中年で発病し、無意識に起こる眼球の往復運動や歩行障害などの症状がみられるものなどがあります。
    • 一般に、孤発性(非遺伝性)のオリーブ橋小脳萎縮症では、発病から5~10年で歩行不能となりますが、遺伝性の脊髄小脳変性症では進行がおそく10~20年の経過をたどります。
  • ジストニアとは、自分の意思に反して、筋肉の収縮や硬直が持続したり、繰り返し起こる病気です。

<原因>

  • 原因不明ですが、検査をすると小脳や脳幹に委縮が認められます。
  • 30%が遺伝性で約70%は孤発性(非遺伝性)といわれています。

<治療>

  • 根治させる方法はなく、それぞれの症状を軽減させる対症療法が中心となります。
  • 脊髄小脳変性症の治療薬として、ヒルトニン(TRH:甲状腺刺激ホルモン分泌促進ホルモン)の注射薬やTRH誘導体のセレジストという経口薬が使用されます。セレジストは、歩行時のふらつきなどの運動障害の改善に効果が期待されています。
  • パーキンソニズムに対しては、抗パーキンソン剤が使用されます。
  • 排尿障害に対してはα交感神経遮断薬が使用されます。
  • 立ちくらみなどの起立性低血圧には、交感神経作動薬(アメジニウム、ミドドリン、ドロキシドーパ)などが使用されます。
  • 上記の薬物療法とともに、言語療法や歩行訓練などのリハビリテーションが行われます。