ウイルス肝炎(A型、B型、C型、D型、E型)

肝炎ウイルスは、A型、B型、C型、D型、E型の5つが確認されています。最近は、G型、TT型も発見され、肝炎との関係が疑われています。

■A型ウイルス肝炎

<症状>

  • 感染してから2~6週間の潜伏期間を経て、38℃以上の急激な発熱、全身倦怠感、食欲不振、悪心(おしん)、嘔吐など、かぜのような症状が現れます。また、下痢や腹痛など消化器症状が出現することもあります。
  • 黄疸を伴ったはっきりとした肝機能異常が現れるのは発症してから数日後です。ごくまれに重症化して、劇症肝炎を起こしたり、腎不全を併発することがあります。
  • 予後は良好で、1~2カ月後に肝機能は正常化します。また、免疫ができるので再び感染することもありません。(慢性化して肝硬変や肝臓がんになることはありません。)

<原因>

  • 感染ルートは経口感染で、飲料水や魚介類の生食、感染者の便で汚染された水などによって感染します。
  • 現在、日本で感染することはほとんどなく、下水道設備が整っていないような地域に海外旅行して感染する場合が大半を占めています。

<治療>

  • 安静と栄養管理が治療の原則です。
  • 軽い肝障害の場合は、自宅療養も可能ですが、黄疸がみられるときは入院治療が必要です。

■B型ウイルス肝炎

<症状>

  • 感染後1~6ヶ月で発症します。A型ウイルス肝炎と同じような発熱、全身倦怠感、食欲不振、悪心(おしん)、嘔吐、黄疸など症状が現れますが、無症状のまま過ごす人も少なくありません。
  • B型肝炎には、急性と、慢性があり、急性は、成人が初めてB型肝炎ウイルスに感染して発病したものであり、急性B型肝炎といわれています。慢性は、B型肝炎ウイルスに持続感染(6ヵ月以上感染)している人(キャリア)が発病したもので、慢性B型肝炎といわれています。
  • 急性B型肝炎は、症状がでないまま治癒することがあり、これを不顕性感染といいます。
  • 母子感染によるキャリアの10%が、10~30歳代の肝炎を発症し、慢性肝炎に移行します。
  • ほとんど症状が出ない無症候性キャリアもみられますが、まれに劇症肝炎とよばれる重い状態になったり、長い年月を経て、肝硬変や肝臓がんを引き起こすことがあります。

<原因>

  • 感染ルートは、血液や体液です。
  • かつては、輸血、注射針・注射器の使い回しなどが感染経路になっていましたが、現在は衛生意識の向上により、医療機関での感染はほとんどみられません。
  • 母子感染も予防法が確立してからは、減少しています。
  • 最近増えてきているのは、不特定多数との性交渉で感染するケースです。

<検査>

  • 血液検査をしていきます。
  • HBs抗原
    • HBs抗原が陽性の場合、B型肝炎ウイルスが肝臓の中で増殖しておりB型肝炎ウイルスに感染していることを示します。
    • 初めてB型肝炎ウイルスに感染した人とB型肝炎ウイルスに持続感染している人(HBVキャリア)がいます。
  • HBs抗体
    • HBs抗体が陽性の場合、B型肝炎ウイルスに感染したことがあるも治癒しており、免疫を獲得していることを示します。そのため、HBs抗体は、B型肝炎ウイルスの感染を防御する働きがあり、他の人への感染の危険性はありません。
  • HBe抗原
    • HBe抗体が陽性の場合、ウイルスが盛んに増殖していることを意味し感染性が非常に高いといわれています。
  • HBe抗体
    • HBe抗体が陽性の場合、一般的にHBe抗原は陰性となり、B型肝炎ウイルスの量が少なくなります。そのため、感染力も低くなるといわれています。

<治療>

  • 基本的な治療は、A型肝炎ウイルスと同様で、通常は1~2ヵ月で治癒します。
  • 急性肝炎の場合は、急性期に肝庇護剤(かんひござい)を使用することにより、ほとんどの人で完全に治癒します。
  • 慢性肝炎の場合は、肝庇護剤(かんひござい)やウイルスを排除する目的でインターフェロンや抗ウイルス薬(ラミブジン)が使われます。
  • 特定のパートナーがキャリアで、自分が抗体をもっていない場合、ワクチンを受けることで感染の恐れがなくなります。性行為による感染も心配ありません。

■C型ウイルス肝炎

<症状>

  • 急性の場合、1~4ヶ月の潜伏期間を経て発症します。
  • 食欲低下、発熱、倦怠感などの風邪のような症状で発症することが一般的ですが、他の肝炎に比べて症状は軽く、黄疸が現れるのも半数程度です。(軽度の黄疸は白目が黄色になってきます。重度になると皮膚の黄色味が強くなり、尿の色が濃くなってこげ茶色になります。)
  • 感染者の7~8割は慢性的な経過をたどり、目立った症状がなくても、感染から20~30年かけて徐々に症状が悪化し、肝硬変や肝臓がんに進行することもあります。

<原因>

  • 感染ルートは、血液や体液です。C型肝炎ウイルスが血液を介して感染し、肝臓で増殖することによって起こります。
  • B型ほど感染力は強くありません。
  • 性交渉による感染や母子感染はまれで、多くは以前に受けた輸血や医療器具が原因です。

<検査>

  • 診断には血液検査で肝機能を調べます。
  • 肝炎では、AST(GOT)やALT(GPT)という酵素の値が高くなります。
  • 原因ウイルスの診断には、HCV抗体とHCVのRNA(リボ核酸)を測定します。
  • 急性肝炎では初期にHCV抗体が陰性のこともあるため、HCV RNA(リボ核酸)を同時に検査して確認を行います。

<治療>

  • 通常、しばらくすると肝炎は自然に軽快し、C型ウイルスが排除されると肝炎は治ります。
  • 全身症状が強い場合は、入院治療が必要ですが、症状が軽い場合は通院治療を行っていきます。
  • C型ウイルスは肝臓にすみつきやすく、長期間感染状態が持続するため慢性肝炎に移行する確率は約70%と高いことが知られています。
  • 肝機能検査を継続し、慢性化の徴候が現れたときは、インターフェロンによる治療を開始します。
  • 慢性C型肝炎の場合は、インターフェロンと抗ウイルス薬を併用します。副作用を抑えたペグインターフェロンが用いられることもあります。
  • C型肝炎、劇症肝炎になることは極めてまれであるといわれています。

■E型肝炎ウイルス

<症状>

  • 感染後、1週間~2ヶ月で発症します。
  • A型ウイルス肝炎と同様に、かぜに似た症状が出現し、黄疸などがみられたあと、1~2ヶ月で自然治癒します。
  • 慢性化や重症化することはほとんどありません。しかし、妊婦が感染すると、劇症肝炎を起こしやすく死亡率が高いといわれています。

<原因>

  • 感染ルートは経口で、飲料水や肉などを介して感染します。
  • 亜熱帯、熱帯地域で流行しており、そのような国に渡航したときに感染することが多いようです。
  • 日本でも発症した例がありますが、イノシシの生肉が原因といわれています。

<治療>

  • 安静と栄養管理を心掛けることで自然治癒します。

■D型肝炎ウイルス

  • D型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスに寄生するものです。
  • D型肝炎ウイルスに感染したB型肝炎の人の血液や体液を介して、他の人に感染します。
  • 日本での感染例はほとんどなく、中央アジアや地中海沿岸に比較的多い肝炎です。
  • 発症すると、劇症肝炎を引き起こしたり、慢性肝炎に移行することもあります。
  • 治療は、安静と栄養管理が中心です。
  • 肝炎ウイルスは、A型、B型、C型、D型、E型の5つが確認されています。最近は、G型、TT型も発見され、肝炎との関係が疑われています。