子宮筋腫

■子宮筋腫

<症状>

  • 過多月経
    • 腫瘍細胞の増殖、増大によって子宮筋の収縮力が低下します。そうすると、血管圧迫力(子宮出血止血機能)が低下し過多月経が起こります。
    • 毎月の月経時には、頻回にナプキンを取り替えないと間に合わなかったり、血の固まりがたくさん出る事があります。
    • 月経血は、子宮内膜にある酵素の作用で凝固しないが、酵素の割合に比べて出血量が多いと、酵素が不足して凝結が生じます。
  • 不正出血
    • 子宮壁の潰瘍やびらんによって、不正出血が生じ貧血になります。
  • 立ちくらみ、倦怠感
    • 過多月経や不正出血によって貧血になり、立ちくらみや倦怠感が出現します。
  • 頻尿
    • 腫瘍細胞が膀胱を圧迫して、膀胱神経を刺激して尿意を感じる様になり頻尿となります。
  • 乏尿、無尿
    • 腫瘍細胞が増大し尿管を圧迫すると、尿管が狭くなっり閉塞して、膀胱への尿の流出が停止し、乏尿、無尿となります。
    • 乏尿とは、1日の尿量が400ml以下をいいます。
    • 無尿とは、膀胱にまで尿が運ばれない状態であり、1日の尿量が100ml以下をいいます。
  • 便秘
    • 腫瘍細胞の増殖により筋腫が増大し、直腸などの消化管を圧迫して通過障害が起こり便秘となります。
  • 腰痛や下腹部痛、坐骨神経痛
    • 腹腔内で腫瘍細胞が増殖し、筋腫が大きくなると骨盤神経を圧迫して腰痛や下腹部痛、坐骨神経痛が出現します。
  • 不妊
    • 筋腫によって、子宮内腔や卵管を圧迫して起こります。

<子宮筋腫の種類>

  • しょう膜下筋腫
  • 筋層内筋腫
  • 粘膜下筋腫
  • 上記の3つは、子宮体にできる筋腫です。
  • 発生する位置は9割が子宮体部で、まれに頸部にも発生します。

<原因>

  • 子宮筋腫は、女性ホルモンの影響で、子宮の筋肉に発生する良性の腫瘍です。
  • 女性ホルモンの中の、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌過剰の影響が大きいといわれています。
  • 子宮筋腫が、ガンになりやすいという事はありません。
  • 初経が早くなる事により、エストロゲンの影響を受ける期間が長くなり、子宮筋腫が多くなってきている様です。
  • 一方、もう一つの女性ホルモンであるプロゲステロン(黄体ホルモン)には、子宮筋腫の発生を抑える作用があるといわれています。最近は、少子化で妊娠回数が減少してきている為に子宮筋腫になる人が多い様です。
  • 40歳代に最も多く発見されますが、最近は若年者も増加傾向にあります。

<検査>

  • 内診
    • 医師が滅菌手袋をして膣の中に指をいれ、子宮や卵巣の大きさをみたり、圧痛の有無、硬さはどうか、腫瘍が移動可能かなどを診察していきます。
  • 超音波検査
    • 子宮筋腫の診断をするだけでなく、子宮内膜症や卵巣腫瘍の合併の有無の確認をします。
  • 細胞診・組織診
    • 子宮筋腫と診断された患者さんは、子宮体癌の合併がしばしばみられる為検査をします。
  • CT・MRI
    • 腹部全体の断面像を写し出します。
  • 血液検査
    • 子宮筋腫では、過多月経による貧血になっている場合があります。また、検査項目のCA125などの腫瘍マーカーは、子宮内膜症を合併している場合や卵巣癌でも上昇します。

<治療>

  • 治療法は手術療法が主ですが、子宮筋腫の症状と大きさ、位置などによって決定します。
  • 子宮筋腫が認められても、全ての人が治療対象ではありません。
  • 子宮筋腫が握りこぶし以下の大きさでは、経過観察のみで、積極的に治療はしない場合が多いです。
  • 閉経後は筋腫結節が縮小する為、手術せず様子観察する場合もあります。
  • 子宮筋腫特有の症状がある場合には、薬物療法により症状の改善を図ります。それでも改善しない場合は手術を検討していきます。
  • 子宮筋腫が握りこぶし以上と大きい場合は、手術適応となるケースが多いです。
  • 手術療法には、「単純子宮全摘出術(腹式あるいは膣式単純子宮全摘出術)」「筋腫核出術」があります。
  • 「単純子宮全摘出術(腹式あるいは膣式単純子宮全摘出術)」
    • 子宮頸部を含めて子宮全体を摘出する手術方法です。
    • 腹式の手術は下腹部を切開しない為、傷が残る事はなく手術侵襲も少ないのが利点です。
    • しかし、膣口から子宮を摘出する為、子宮筋腫があまり大きくない方、経膣分娩の経験がある方、下腹部の手術をしていない方(手術の既往があると、腹腔内に癒着があることがある為)が適応されます。
  • 「筋腫核出術」
    • 筋腫のみを摘出し子宮は残す手術方法です。
    • 未婚者やこれから出産を希望する人など、子宮を温存する必要がある方に適用されます。