子宮体がん

■子宮体がん

<症状>

  • 子宮の体部(子宮内膜)にできるがんです。
  • 初期症状として、不正出血水っぽいおりものがみられます。
  • 進行すると、子宮頸がんと同様に出血が持続するようになり、おりものが悪臭をともなってきます。
  • 他に、排尿痛または排尿困難、性交時痛、骨盤領域の痛みなどの症状が現れることがあります。
  • 進行は子宮頸がんよりゆるやかですが、放置するとがん性腹膜炎や敗血症、尿路感染などを引き起こすことがあります。

<原因>

  • 子宮体がんは40歳代から増え始め、閉経後の50歳~60歳代の女性に多く、卵胞ホルモン(エストロゲン)との関連が深いと考えられています。
  • 閉経後の女性、未婚、未出産の女性、高齢出産、動物性脂肪を好む肥満体の女性に多く見られます。(これらが当てはまる女性は、同時に乳がんの発生率も高くなることが分かっています。)
  • その他、高血圧や糖尿病などの持病がある人は、発生率が高いとされています。

<検査>

  • まず、細胞診を行います。子宮体がんの細胞診は、子宮体部に細い器具を挿入して子宮内膜の細胞を採取し顕微鏡で調べる検査になります。
  • 子宮体がんの細胞診の検査結果は、5段階(クラスI-クラスV) に分けられます。
    • 「クラスI、II」:正常
    • 「クラスIIIa」:子宮内膜増殖症
    • 「クラスIV、V」:がんをそれぞれ想定しています。
  • 細胞診でがんが疑われる場合には、組織診が必要となります。

<子宮体がんの病期(ステージ)>

  • 「0期」:子宮内膜に正常の細胞とは異なった顔つきの異型細胞といわれる細胞が増えている状態で、前がん状態です。(子宮内膜異型増殖症)
  • 「Ia期」:子宮体部の内膜にがんがとどまっている状態。がんは子宮体部に限局している
  • 「Ib期」:子宮体部の筋層への浸潤が1/2以内の状態。がんは子宮体部に限局している
  • 「Ic期」:子宮体部の筋層への浸潤が1/2を超える状態。がんは子宮体部に限局している
  • 「IIa期」:がんが子宮体部だけではなく子宮頚部に拡がっているが、頚部の浸潤は粘膜内である状態
  • 「IIb期」:がんが子宮体部だけではなく子宮頚部に拡がっていて、頚部の浸潤は粘膜を超えている状態
  • 「IIIa期」:がんは子宮外まで拡がっているが、骨盤の領域以外にまでは拡がっていない状態で、癌が子宮の外の膜や骨盤の腹膜あるいは卵巣卵管に転移しているもの、あるいは腹水の中にがん細胞の認められる状態はIIIa期になります
  • 「IIIb期」:がんは子宮外まで拡がっていて腟壁に転移を認める場合はIIIb期になります
  • 「IIIc期」:がんは子宮外まで拡がっているが、骨盤の領域以外にまでは拡がっていない状態で、骨盤内、あるいは大動脈周囲のリンパ節に転移を認めるもの、もしくは、基靭帯(きじんたい)に浸潤を認めるものはIIIc期になります
  • 「IVa期」:がんが膀胱、あるいは腸の内腔に浸潤しているが、浸潤は粘膜までの状態はIVa期になります
  • 「IVb期」:がんが骨盤を越え遠隔臓器転移を認めるもの、あるいは腹腔内や鼠径部(そけいぶ)のリンパ節に転移を認める場合はIVb期になります

<治療>

  • 通常、子宮体がんの治療法は子宮を摘出する手術が中心となります。
  • 「単純子宮全摘出術」
    • 内膜異型増殖症やIa期までのごく初期のがんの場合には子宮、卵巣、卵管を摘出する単純子宮全摘出術が行われます。
    • 開腹して行う方法(腹式)と、膣から摘出を行う方法(膣式)があります。
    • 通常は腹式となりますが、子宮内膜異型増殖症の場合には膣式で行われることもあります。
    • 閉経後の人では卵巣も一緒にとる場合もあります。(卵巣を切除するのは、卵巣から分泌されるホルモン(エストロゲン)が子宮体がんの増殖を促す作用があるためです。)
  • 「拡大子宮全摘出術」
    • I期、II期の子宮体がんが適応になる手術です。
    • 子宮とともに周囲の組織や膣の一部などを切除します。
    • 骨盤内や腹部大動脈周囲のリンパ節切除(郭清)を行うこともあります。
  • 「広汎子宮全摘出術」
    • II期の子宮体がんに適応される手術です。
    • 子宮とともに膣や卵巣、卵管など周囲の組織も広い範囲で切除します。
    • がんがリンパ節にも転移している危険性が高いので骨盤内のリンパ節の切除も同時に行います。
    • 腹部大動脈周囲のリンパ節切除も行う場合があります。
  • 「放射線療法」
    • 高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺す治療方法です。
    • 日本ではIII~IV期で手術ができない場合、または再発した場合などに行われることが一般的です。
    • 放射線は体外から放射線を照射する外照射と子宮内に放射線源を入れて照射する腔内照射があり、組み合わせて行うこともあります。
    • 手術後に放射線療法を行うのは、リンパ節転移を認めた場合、病変が子宮の壁に深く浸潤していた場合、腟壁に浸潤していた場合などです。
  • 「化学療法(抗がん剤)」
    • 遠隔転移などのために外科療法で切除しきれない場合や、がんが子宮外に拡がっている場合(III期,IV期)、手術後にがんが再発した場合に化学療法(抗がん剤)による治療を行います。
  • 「ホルモン療法」
    • 子宮内膜異形増殖症やIa期などごく早期のがんで妊娠・出産の希望があり子宮を残したいと希望する若い女性の場合にはホルモン療法で治療します。
    • 子宮体癌の増殖や転移を抑える作用のある、黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きをする薬を飲みます。

<子宮体がんの予後>

  • ステージ分類による5年生存率は、0期 100%、I期 93.5%、II期 79.8%、III期 63.2%、IV期 24.3%です。