■乳がん
<症状>
- 乳がんが5mm~1cmくらいの大きさになると、硬いしこりを感じます。乳がんのしこりは、進行すると周囲の組織と癒着して動かなくなるのが特徴です。
- しこりがあるからといって、すべて乳がんというわけではなく、乳腺症や線維腺腫といった良性の疾患であることも多いです。
- 乳がんが乳房の皮膚近くまで達すると、えくぼのようなくぼみができます。乳房表面の皮膚が、炎症を起こしたときのように赤く腫れ、痛みや熱感をともなう場合もあります。
- 乳頭から分泌物、また血液の混じった分泌物が出ることもあります。
<原因>
- 乳がんの直接の原因はわかっていません。しかし、以下の人が要因としてあげられます。
- 母親か姉妹に乳がんになった人がいる
- 初経年齢が早い人
- 閉経年齢が遅い人
- 流産を繰り返した人
- 高齢出産
- 出産歴がない人
- 動物性脂肪の多い食事を好む肥満気味の人
- 女性の乳がんの罹患率は30歳代から増加して、50歳前後にピークを迎えます。その後は次第に減少します。
- 乳がんの約90%はこの乳管から発生し、「乳管がん」と呼ばれます。小葉から発生する乳がんは約5~10%あり、「小葉がん」と呼ばれています。これらのがんは、乳がん組織を顕微鏡で検査で区別できます。
- 乳管のなかにとどまっているものを「乳管内がん」または「非浸潤がん」といい、乳管の外まで拡がっているものを「浸潤がん」といいます。
- 乳管の外にまで拡がったがん細胞は、わきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)に転移したり、リンパや血液の流れに乗って乳腺から離れた臓器(骨、肺、肝、脳など)にまで転移します。これを遠隔転移といいます。
- 遠隔転移を有する乳がんを総称して「転移性乳がん」と呼んでいます。また、手術後に、手術をした部分にがんが再発したり、遠隔転移が起こった状態を「再発乳がん」とよんでいます。
<検査>
- 視触診(医師が手でしこりを触診する方法です。)
- 超音波検査(乳房用の超音波診断装置を備えた施設で受けることが可能です。)
- MRI検査、CT検査(しこりががんであるかどうか、また病変の拡がり具合を診断します。)
- マンモグラフィ(乳房用のX線装置)
- 生検(がんの疑いがある場合、良性か悪性かを、組織を採取して判断していきます。)
<治療>
- 乳がんの治療には、手術、放射線療法、化学療法(抗がん剤療法)、ホルモン療法があり、症状の進み具合によって、それぞれを組み合わせて治療していきます。
- 乳がんの手術には大きく分けて、乳房全体を取り除く「乳房全摘出術」と、しこりを含む乳腺の一部だけを切除する「乳房温存術」があります。切除する範囲は乳房内でのがんの拡がりによって決められ、術式はいくつかの種類に分類されます。
- 乳房温存術の場合、局所再発率が高くなるため、放射線療法がかかせません。乳房全摘出術を行った場合でも、リンパ節転移が多数発見された場合は、放射線療法が行われる場合があります。
- 乳がんの原因としてエストロゲンの影響が大きいと考えられているため、これをコントロールする治療方法がホルモン療法となります。
- がん細胞の発育を抑えて、転移による再発を予防するために抗がん剤と併用したり、いくつかのホルモン療法剤を組み合わせて使用される場合もあります。
- 化学療法は、抗がん剤を内服または静脈注射し治療していきます。
- 化学療法は、がん細胞を死滅させる効果があり、乳がんは比較的化学療法に反応しやすいがんといわれています。
- 化学療法は、がん細胞を死滅させる他に、正常な細胞にも作用してしまうため、白血球、血小板の減少、吐き気や脱毛などの副作用がみられます。