■炭疽(たんそ)
<症状>
- ヒト炭疽には感染経路によって皮膚炭疽、腸炭疽、肺炭疽の3つの主要な病型があります。
(1)皮膚炭疽
- 自然感染によって起きる炭疽の95%以上は、この病型です。
- 1~10日の潜伏期間のあと、感染した場所がニキビや虫さされ様になり、かゆみを伴うことがあります。初期病変周囲には水疱が形成され、それが崩壊して潰瘍状になり、黒褐色のかさぶたができます。
- およそ80%の患者さんでは、かさぶたの後7~10日で治癒しますが、20%では感染はリンパ節および血液へと進展し(菌血症)、その後、敗血症となり致死的である。
(2)腸炭疽
- 炭疽菌に汚染された食品や飲み物を摂取した後、1~7日の潜伏期間を経て、吐き気、嘔吐、食欲不振、発熱があり、次いで腹痛、腹水貯留、吐血、血液性の下痢を呈する場合もあります。
- 上記の他、咽頭部に感染することもあります。
- 敗血症へと移行すると、ショック、チアノーゼを呈し、死亡するといわれています。
- 腸炭疽の死亡率は25~50%とされます。
(3)肺炭疽
- 1~7日の潜伏期のあと、軽度の発熱、倦怠感、筋肉痛等、インフルエンザのような症状で始まり、数日後、突然呼吸困難、発汗、チアノーゼなどがみられるようになります。この段階に達すると通常24時間以内に死亡するといわれています。
<原因>
- 炭疽菌の感染によって起こります。
- 炭疽は、もともとは土の中に存在している炭疽菌の芽胞が、牛、馬、ヒツジ、ヤギなどに感染して起こる草食獣の病気です。
(1)皮膚炭疽
- 感染動物やその毛皮などとの接触によって、傷口から感染して起こります。
(2)腸炭疽
- 保菌動物の肉を食べることで感染して発症します。
(3)肺炭疽
- 自然に起きることはまれで、テロなどによってまかれた菌の芽胞を吸引することで感染して起こります。
<治療>
- ワクチンはわが国では販売されておりません。
- 治療には抗生物質(シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、ペニシリンGなど)で治療しますが、感染後できるだけ早期に大量投与することが必要です。