くも膜下出血

■くも膜下出血

<脳の特徴>

  • 実は、脳は痛みを感じない組織です。
  • 頭痛の中には、2次性頭痛といって、脳の中に何か治療しなければ解決されないという原因を持つものがあります。
  • その主な原因として、脳血管障害があり、以下の3つに分類されます。なお、これらを合わせて脳卒中とよんでおります。
    • 「脳梗塞」:血管が詰まるタイプ
    • 「くも膜下出血」:血管が破れて出血するタイプ
    • 「脳出血」:血管が破れて出血するタイプ
  • 中でも、くも膜下出血は最も死亡率が高く、特に冬を迎える時期に、急激に増加すると言われています。
  • くも膜下出血の頭痛は、脳を包んでいる膜に神経の枝があり、それを出血した血液が刺激する事で痛みを感じています。

<症状>

  • 脳を包んでいるくも膜の下に、動脈瘤とよばれる血管のコブが破裂して出血し、脳を圧迫する病気
  • 頭の激痛(バットで殴られる様な痛み、頭から熱湯を注がれた様な痛みなど):1番多い症状
  • 意識障害(頭痛により、気が遠くなる、倒れた瞬間は覚えていない):2番目に多い症状
  • 激しい吐き気、嘔吐:3番目に多い症状

<前兆>

  • 頭の激痛がくる直前、水道管が破裂する様な「シュワー・シュワー」と水圧が押し上げられる様な気がする。
  • 1ヶ月程前から、頭のモヤモヤ、目の突きささる様な痛みがある方もいます。
  • 貧血の様なフラッとした症状
  • 疲労感
  • 頭、背骨の痛みなど
  • 動脈瘤は、1回だけの破裂と思われがちですが、少しもれて又もれてと繰り返して起こります
  • 動脈瘤が多発する場所には、感覚神経が分布しているので、それが広がってくる時に、上記の様な前兆となって現れる事があります。

<原因>

  • くも膜下出血の原因は、9割が脳動脈瘤破裂にあります。残りの1割は、外傷や脳動静脈奇形と言われています。
  • 動脈瘤とは、脳の血管が枝分かれしている柔らかい部分に血液の圧力が掛かり、風船の様に膨らんだコブ。これが破裂して、くも膜下出血が起こります。

<特徴>

  • くも膜下出血を起こすと3分の1の人が亡くなると言われています。残りの人は、手術・治療となるが、完全に発症前に戻るのは、半分位で、残りの方は何らかの後遺症がみらます。
  • 女性に多い病気です。
  • 40歳代位から、くも膜下出血のピークになります。
  • 片頭痛は、2時間位かかって痛みがピークになるも、くも膜下出血は突然始まるのが特徴です。
  • 頭痛持ちの人に動脈瘤が多いと言われています。(動脈瘤は、血管の弱い所に出来やすい為、頭痛などによる炎症によって出来やすい。)
  • 高血圧の人に多いと言われています。(高血圧は、動脈瘤を破裂の方向に持っていく為。)
  • タバコを吸う人の動脈瘤が破れる確率が高いと言われています。(男性は吸わない人の3.6倍、女性は2.7倍)
  • 2親等以内に脳卒中で亡くなった人がいるなど、遺伝性があります。

<くも膜下出血の再出血>

  • 発症から早い時期ほど再出血しやすく、特に24時間以内に起きることが多いと言われています。この再出血が起こると死亡率が高くなります。
  • その為、早い段階で専門病院に行き、適切な処置を受ける事が大切です。
  • くも膜下出血の最大の予防は、脳ドックなど事前の検査を受ける事にあります。

<意識だけに絞った5段階のグレード>

  • 「グレード1」:鮮明
  • 「グレード2」:ボーッとしている
  • 「グレード3」:声を掛けると反応する
  • 「グレード4」:呼びかけても反応なし
  • 「グレード5」:全く反応なし
  • グレード3までは、きちんとした医療施設に行くと生還可能であると言われています。

<治療>

  • 「脳ドック」
    • 般的な血液・尿検査のほかに磁気を使ったMRIとMRAの検査をし、頭の状態をみていきます。
    • コースによって、心電図、眼の検査、動脈硬化検査などが加わります。病院によって違う為、確認した方がいいです。
    • 脳ドックの料金の平均(病院によって異なります):約4~8万円
    • 健康診断の為、保険適用になりません。
  • 「MRI(Magnetic Resonance Imaging)」または「磁気共鳴画像」
    • 磁気を使った検査で、最も中心となる画像診断です。
    • 脳の表面や断面を詳細に画像化します。
    • 放射線を使わないので安全性が高い。
    • 脳梗塞、脳出血、まだ症状の出ていない無症候性脳梗塞、脳腫瘍、脳萎縮などが分かります。
    • MRIは、新しい装置で30分位で検査が終了しますが、CTより検査時間が長いのデメリットです。
  • 「MRA(MR Angiography)」または「磁気共鳴画血管画像」
    • MRIと同じ装置を使い、撮影の方法を変える事で、血管を立体的に写し出す方法です。(磁気を使って、3次元的な検査を行います。)
    • 特徴としてX線による血管造影検査と違い、造影剤を使わずに検査する事が可能です。
    • 脳動脈瘤の有無、脳血管の狭窄、頚部の血管などを立体的に見る事ができます。
    • MRAは、新しい装置で30分位で検査が終了しますが、CTより検査時間が長いのデメリットです。
  • 「CT(Computed Tomography)」または「コンピュータ断層撮影」
    • X線を使って身体の断面を撮影し、コンピューターで画像にします。
    • X線を使用しますが、人体への悪影響はほとんどありません。
  • MR検査(MRI、MRA)における注意事項:以下の方はMR検査を受ける事が出来ません。
    • 心臓ペースメカーを使用している方
    • 体内に金属を装着している方
    • 妊娠している方
    • 極度の閉所恐怖症の方

<未破裂動脈瘤が見つかった場合の治療>

  • 「外科的手術」
    • クリッピング術:動脈をクリップで直接はさみ、血液の流れを直接止める手術
  • 「内科的手術」
    • コイル塞栓術:動脈瘤の中に柔らかい針金をつめ、血液の流れを止める手術。直径1~2ミリの細いストロー状の管を足から血管に差し込み動脈瘤を内側から治療する手術となります。
  • クリッピングとコイルは、どう使い分けるのか?動脈瘤の形によって、向き不向きがあります。
    • 「オーソドッグスでコブが膨らんだ様な動脈瘤」:クリッピングとコイルのどちらも有効に治療できます
    • 「山なり型の平らに近い動脈瘤」:コイルを使って手術すると、入り口が広い為柔らかい針金が上手くおさまらず、血管を詰まらせてしまう危険性があります
    • 「風船の様に完全に丸く膨らんだ動脈瘤」:クリッピングもコイルも対処できない為、新たな血液の通り道をつくるバイパス術となります

<その他>

  • 脳動脈瘤は、案外破裂しないと言われています。(飛行機に乗っても支障ないと言われています。)
  • 脳ドックで未破裂動脈瘤が見つかっても、手術を勧められる人は、約20~30%、他の8割の人は、血圧コントロールをしっかりしていると、くも膜下出血をきたしていないそうです。
  • とにかく、良い医者に出会わないと、良い治療が受けられない為、セカンドオピニオンとして、いろんな先生に相談し、意見を聞いた方が良いと思います。