鉄欠乏性貧血

■鉄欠乏性貧血

<症状>

  • 赤血球または、赤血球に含まれるヘモグロビンの量が減少した状態のことをいいます。
  • 貧血の70%は鉄欠乏性貧血であり、若い女性に最も多くみられます。
  • 貧血が進むにつれ、全身倦怠感、めまい、動悸、息切れ、立ちくらみなどの症状が現れます。
  • 鉄欠乏状態が長引くと、さじ状爪(爪がスプーンのように反り返る状態)になることもあります。
  • まれに、嚥下困難やのどに異物感が生じる場合もあります。

<原因>

  • 胃潰瘍などの消化管疾患
  • 子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患による月経過多
  • 妊娠・分娩による出血
  • 食事での鉄の摂取不足
  • 胃や十二指腸切除後による鉄の吸収不足

<治療>

  • 疾患による出血の場合は、原因疾患の治療を行います。
  • 鉄欠乏性貧血の症状は、不足している鉄を補給する事で、大部分は簡単に貧血は改善されます。
  • 一般に鉄欠乏性貧血と診断され鉄剤を服用した場合、「平均0.1~0.2g/dl/日」のペースでヘモグロビンが増加し、約2~3ヶ月でヘモグロビンは正常化します。
  • 貯蔵鉄の状態を確認するためには、血清フェリチン値を測定を行います。
  • フェリチンの値が「20ng/dl」以上あれば貯蔵鉄が十分量まで補充されたと判断し、鉄剤投与を中止します。しかし、再発の可能性もあるため、定期的に血液検査をした方がよいでしょう。
  • 主な鉄剤
    • 「クエン酸第一鉄(フェロミアなど)」:胃酸及び消化管の食物分解産物の関与なしに吸収されるので食後服用に適している
    • 「ピロリン酸第二鉄(インクレミン)」:シロップなので主に小児で用いられる
    • 「硫酸第一鉄(フェロ・グラデュメット、スローフィーなど)」:徐放性剤とすることで、胃腸障害の副作用を防いでいる
    • 「フマール酸第一鉄(フェルムなど)」:徐放性剤とすることで、胃腸障害の副作用を防いでいる
  • 内服薬で消化器症状の副作用が強い場合や鉄の吸収が十分でないときなどには、静脈注射で鉄を補給する事もあります。
  • 食事による鉄分補給について
    • 食生活で、鉄分を多く含む食品の摂取を心掛けます。
    • 吸収されやすいレバーをはじめとする肉、魚、卵黄などの動物性食品のヘム鉄を多く摂取するようにします。
    • 鉄分の吸収を促進するビタミンC、赤血球の寿命を伸ばすビタミンEを多く取り入れます。
    • 3食きちんと摂取し、栄養バランスの整った食生活を心掛けます。
    • 食事の前後にタンニンが含まれる緑茶やコーヒーは、鉄の吸収を悪くするので控えます。